手をつなごう 介護の現場から⑪

2019/01/09

住み慣れた地域で暮らし続ける
~努力と工夫で生活を維持~

 マグロ船や観光船のエンジニアとして働いてきたOさん。90才近くになりますが、足が不自由な妻の通院支援をしたり、一緒に買い物に行くなど支え合いながら2人で暮らしていました。しかし半年前にOさんが患っていた病気が悪化し手術。その後は車いす生活になりました。
在宅生活は困難になり、子供たちが施設への入所を進めましたが頑なに拒否。Oさんは入院中に、自宅での車いす生活が出来るようにと知人の大工に住宅改修を依頼し、福祉用具も選定。得意な携帯やパソコンで情報を集めて退院後の準備を進めました。渡した福祉用具のパンフレットはボロボロになるほど読み込まれていました。退院後のことを何度か打合せし、周りの心配も何のその、笑顔で退院。何より退院を喜んだのは妻でした。
時々転倒することがあったものの「工夫すれば手の力とタイミングで大丈夫」と努力を重ね、介助する場面は徐々に減りました。買い物は宅配を利用。冷蔵庫の中を頭の中で把握し、ヘルパーに依頼をします。
こうして介護サービスの利用と子供たちの支援で2人での生活を再スタート。お互いデイサービスに行かない日はソファーでより添い、おしゃべりや時には「ケンカ」もしながら賑やかに過ごしています。
私自身は在宅での生活は正直困難だと思いました。しかし、Oさんの前向きな姿勢に背中を押され、工夫や改善を積み重ねることで住み慣れた自宅での生活を続けていくこともできるのだと教えられました。

みうら訪問看護ステーション
ケアマネージャー 山口順子